物言う株主として有名な村上世彰さんが、子供向けに書いた本です。
子供が読むにしても、大人が読むにしても、中途半端な内容です。
無理に読む必要はないと思います。

著者プロフィール
・書籍名:いま君に伝えたいお金の話
・著者:村上 世彰
・出版月:2018/9/6
・出版社:幻冬舎
投資家。
1959年大阪府生まれ。
1983年から16年強にわたって国家公務員として通産省(現・経産省)に務める。
独立後、1999年から2006年まで投資ファンドを運営。
本の目次
はじめに
1 お金って何だろう? お金のことを知ってお金に強くなる
2 お金と世の中の関係 プライスタグから世界が見える
3 君がお金を手にする方法
4 働き方が大きく変わる
5 稼いだお金を貯めて増やす
6 お金と向き合うための覚悟 お金が凶器に変わる時
7 とっておきのお金の使い方
あとがきに代えて 僕の新たなお金の使い方
総合評価
S 人生が変わる神本
A 絶対に読んで
B 時間があれば読んで
C 強いて読まなくてもいい
D 時間の無駄
S 人生が変わる神本
A 絶対に読んで
B 時間があれば読んで
C 強いて読まなくてもいい
D 時間の無駄
投資界隈で知らない人はいない著名人である村上世彰さんが、子供向けにお金の仕組み、お金の使い方、お金の稼ぎ方などを解説している本です。
そもそもお金とは何かという説明から始まり、貯蓄、投資、借金など、お金に関する幅広いトピックを、子どもに話すような優しい語り口で紹介しています。
お金に関する村上さんの考え方を広く浅く知ることができ、さらに村上さんの幼少期のエピソードを知れる点が、本書の最大の魅力です。
気になった点
内容はどうも中途半端な印象を受けます。
まず、子供向けの本にしては、子供の興味を引く構成になっていません。
本の冒頭に書かれた「はじめに」の部分で長々と自分語りが続き、それが「自分はすごいんだぞ」と暗に言っているような印象があるため、村上さんを知らない子供にとっては、「この人は誰?」と興味を失ってしまうと思います。
また、お金の感覚を子供に身につけさせるためのゲームが紹介されていますが、あまり面白いとは言えません。
たとえば、レストランで会計の際に、参加者が食事代の合計金額を予想し、実際の金額に一番近かった人が賞金をもらえるというものです(テレビ番組『ゴチになります』のようなものです)。
ただし、このゲームが『ゴチ』と違うのは、メニューの金額を最初に見られる点です。
メニューの金額を覚えてから、オーダー後に家族全員が頼んだメニューの合計を思い出し、予想するというルールです。
このゲームは村上さんのご家庭で続けていたとのことですが、果たして本当に面白いでしょうか?
では、大人の資産形成本として読めるかというと、それも物足りません。
子供向けに分かりやすくするあまり、一つ一つのトピックについての掘り下げが不十分です。
総評
村上さんが子供向けの金融教育本として執筆された本ですが、本当に世間の子供を想定して書いたとは思えません。
村上さんの頭の中にいる「イメージ上の子供」に向けて書かれたか、あるいは子供だった頃の自分に向けて書いたように感じます(どちらかといえば後者のように感じました)。
子供向けの金融教育本としては、橘玲さんの『親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの? ――人生という「リアルなゲーム」の攻略法』の方が、明らかに優れています。
お子さんに読ませたい場合はそちらをおすすめします。
個別評価(育児本として)
新規性 ー 新しい情報があるか
今までに見たことがないアイデア、見方を数多く学べる
今までに見たことがないアイデアがいくつかある
今までに見たことがない情報がいくつかあるが、役には立つものは少ない
目新しい情報はほとんどない
今までに見たことがない情報がいくつかありますが、役に立つものは少ないです。
目新しいアイデアは少なめです。
お金を増やすために必要な「期待値」という考え方は、子供が小さいうちから身につけておけば有用です。
汎用性 ー 多くの人の役に立つか
多くの人の役に立つ
ある対象の人に対して役に立つ
僅かだが役に立つ人がいる
ほぼ誰の役にも立たない
お金で失敗しないための考え方が多く書かれており、多くの子供たちにとって有益です。
わかりやすさ ー 理解しやすい工夫があるか
普通に読めば内容を理解できる
集中して読めば内容を理解できる
何回も読まなければ内容を理解できない
意味不明
子供にポンと渡してちゃんと中身が理解できるのは、中学生以上と思われます。
また、大人が読んでから子供に教やすい構成にもなっていません。
実用性 ー 本を読んですぐに役に立つか
読んで即座に実行できるアイデアがいくつかある
即座に実行できるアイデアはないが、長期的にみれば役に立つ
確率は小さいが、人生のどこかで役に立つかもしれない
役に立たない
子供がすぐに実践できる内容ではありませんが、お金で失敗しない考え方を学ぶことができるため、長い人生では有用です。
個別評価(資産形成・経済本として)
新規性 ー 新しい情報があるか
今までに見たことがないアイデア、見方を数多く学べる
今までに見たことがないアイデアがいくつかある
今までに見たことがない情報がいくつかあるが、役には立つものは少ない
目新しい情報はほとんどない
村上さんの幼少期を知れるという点は新鮮ですが、それが読者にとって実用的とは言えません。
汎用性 ー 多くの人の役に立つか
多くの人の役に立つ
ある対象の人に対して役に立つ
僅かだが役に立つ人がいる
ほぼ誰の役にも立たない
貯金、投資、仕事など、お金に関する幅広いテーマについて村上さんの考えを知ることができ、多くの人にとって参考になります。
わかりやすさ ー 理解しやすい工夫があるか
普通に読めば内容を理解できる
集中して読めば内容を理解できる
何回も読まなければ内容を理解できない
意味不明
全190ページと短く、1時間程度で読める構成です。
子供向けとして内容が簡略化されている分、大人にとっては読みやすくなっています。
実用性 ー 本を読んですぐに役に立つか
読んで即座に実行できるアイデアがいくつかある
即座に実行できるアイデアはないが、長期的にみれば役に立つ
確率は小さいが、人生のどこかで役に立つかもしれない
役に立たない
即座に実行できるアイデアはありませんが、お金で失敗しない考え方を身につけることはでき、今後の人生において役立ちます。
印象に残ったポイント
好きなことでお金を稼ぐ
社会に出てから40年以上働くのだから、できることなら好きなことでお金を稼ぐのが理想。
しかし、「好きな仕事であれば稼げなくてもいい」と漠然と考えていると、生活が成り立たなくなり、結果的にお金に縛られることになる。
どんな仕事を選ぶ場合でも、その仕事でどの程度の収入が見込めるのか、生活に支障がないかをしっかりと考えることが重要。
また、「これで稼いでいく」と決められないうちは勉強を頑張るほうがよい。
学生時代に身に着けた幅広い知識が、いずれ自分の仕事を決めるきっかけになるため。
借金はトランポリン
借金は便利な道具だが、リスクも伴う。
本書では、借金を「トランポリン」に例えている。
トランポリンを使えば自力では届かない高さに飛べるが、着地に失敗すると大怪我をすることもある。
この比喩は、借金の危険性とメリットをわかりやすく説明している。

お金を借りる際には、「本当に必要か」「返済できる見込みがあるか」を慎重に考えるべきだというメッセージが伝わってきます。
特に「スマート払い」などの便利な仕組みが普及する時代だからこそ、借金の危険性について知っておく必要があります。
期待値の話
村上氏が投資で重視するのが「期待値」の考え方。
具体例として、100円で買った株が3倍になる確率が10%、0.5倍になる確率が90%だとすると、期待値は次のように計算される。
3×0.1 + 0.5×0.9 = 0.75
期待値が1であれば、100円はそのまま100円。
期待値が1を下回る場合、100円よりも価値が小さくなってしまうので、その株は買わないほうが良いという判断になる。

「期待値」は高校生で学ぶ内容ではありますが、子どもが小さい頃から「期待値」という考え方を身につければ、数字で物事を考えるセンスが養われるでしょう。
まとめ
子供向けとしては内容が堅く、大人向けとしては内容が薄いため、中途半端な一冊になっています。
子供の金融教育本としては、以下の本のほうがおすすめです。

気になる方はぜひ一読を!

最後まで読んでいただきありがとうございました!
にほんブログ村
応援クリックいただけると励みになります!