突然ですが問題です。
日本中の人が紙幣を使い始めるようになったのはなぜでしょうか?
A:金に交換することができたから
B:税金を払わないといけないから
C:日本銀行がその価値を保証しているから
B:税金を払わないといけないから
皆さんは正解出来ましたか?
今回紹介するのは、元ゴールドマン・サックスのトレーダーが書いたお金に関する一冊です。
経済書はなんとなく難しそうと思いますか?
本書は上のようなクイズを使いながら解説してくれるので非常に分かりやすくなっています。
面白いのは、お金に関する常識や固定概念をひっくり返してくれることです。
「なぜ紙幣をコピーしてはいけないのか」
「なぜ借金大国である日本の財政は、破綻しないのか」
分かっていそうで実は分かっていないお金のことがわかる良著です。
結果だけ知りたい方は、最後のまとめをどうぞ!
著者プロフィール
・書籍名:お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門
・著者:田内学
・出版月:2021/9/29
・出版社:ダイヤモンド社
1978年生まれ。
東京大学入学後、プログラミングにはまり、国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。
同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。
以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。
日銀による金利指標改革にも携わる。
2019年退職。現在は子育てのかたわら、中高生への金融教育に関する活動を行っている。
本の概要
なぜ紙幣をコピーしてはいけないのか
「なぜ紙幣をコピーしてはいけないのか」
その答えは「働く人がいなくなるから」です。
この答えを理解するための、面白い例が本書で紹介されています。
両親と4兄弟で暮らす6人家族がいます。
ある日、母親から4兄弟に1マルク紙幣が5枚ずつ渡されます。
このマルク紙幣は母親が作ったオリジナルの通貨です。
母親は4兄弟にこう言います。
母「これからは、お父さんもお母さんも会社の仕事に専念します。 みんなが自分たちで家事をして生活してください。 その代わり報酬を出します。調理担当者には毎日10マルク、 食器洗い担当者には毎日5マルク。洗濯は1回につき10マルクを支払います」
母「そして今日から税金を払ってもらいます。税額は一人につき毎日5マルク。 将来的には変わる可能性もあります。税金を払わないとスマートフォンを取り上げます」
この日を境に4兄弟はスマホを取り上げられまいと自主的に家事を行うようになります。
子どもたちの視点でマルクは価値ある存在になった一方、一家全体の視点では価値が増えているわけではありません。
税金というシステムを導入することで、皆が互いのために働くようになりました。
では4兄弟が紙幣をコピーしだしたら何が起きるでしょうか。
面倒な家事からは解放されますが、皆のために働く人がいなくなってしまいます。
この状況でだれが困るでしょうか。それは4兄弟自身です。
紙幣をコピーしてはいけないのは、紙幣の価値が薄まってしまうからではありません。
みんなが支え合って生きていけなくなるから、コピーしてはいけないなのです。
なぜ借金大国である日本の財政は破綻しないのか
「なぜ借金大国である日本の財政は破綻しないのか」
その答えは「そのお金で働いてくれた人が国内の人だから」です。
日本という「国の財布」の中には、3つの大きな財布が入っています。
「政府の財布」と「個人の財布」と「企業の財布」です。
個人の財布には、国民それぞれの持つ財布が入っています。
企業の財布には、国内にあるそれぞれの企業の財布が入っています。
政府が借金をして使ったお金は消えるのではなく、どこかに移動しています。
政府が仮に1000兆円も借金したとしても、そのお金で働いてくれた人が国内の人であれば、個人の財布と企業の財布に1000兆円が移動しただけです。
どれだけ時間が経っても、そのお金はどこかに存在していて誰かが相続しています。
政府が借金を返すために個人や企業から税金を徴収すれば、いつでも1000兆円を集めることができます。
だから日本の財政は破綻しないのです。
もしも国外にお金を払って労働力を借りた場合はいずれ返さないといけません。
その負担が増え過ぎれば国はつぶれてしまいます。
今後、日本の国内の労働力が減り続け、国外の労働力を借りる場合は日本がつぶれる可能性もあるということです。
お金のむこうに人がいる
著者が本書で語っている最も重要なこと。
それは「お金のむこうに人がいる」ということです。
つまり、お金自体に価値はなく、お金を媒介として働いてくれる人がいるからこそ社会が回っているということです。
世界中のすべての人がお金を使う側になったとき、働く人がいないので、コンビニもレストランも稼働しません。
映画館も開いてなければ電車にも乗れません。
働く人がいなければ、お金の力は消えてしまうのです。
老後2000万円問題が以前に取り沙汰されました。
老後を安心して暮らすには年金だけでは足りず、一世帯当たり2000万円が必要という話です。
では全ての家庭が2000万円貯めることが出来たら、老後問題は解決するでしょうか?
答えはNOです。
なぜならお金をもらって働く人の存在が抜けているからです。
少子高齢化の影響で労働力不足が懸念されている日本。
今の現役世代が2000万円を貯めて老後になったとき、それをもらって働く人が不足していれば2000万円では足らなくなるかもしれません。
“お金”という一つの側面からだけではなく、”人”というもう一つの側面から物事を見ることが重要だと著者は述べています。
人という側面から見れば、社会全体で子供を育てていくことが老後2000万円問題の解決策になるかもしれません。
本書を読んで感じたこと
本書を読んで考えたのは、FIREは独りよがりな考えになりやすいということです。
FIREというのは、「Financial Independence Retire Early(ファイナンシャル・インディペンデンス・リタイア・アーリー)」の頭文字を取った言葉です。
FIが「経済的自立」、REが「早期リタイア」を指しており、株式・不動産などの資産を貯えて若年期でのリタイアを目指すことです。
FIREはお金の側面からの見方が強いと思います。
つまり、資産収入を得たり、お金を使ったりしたときに、その向こうで働いてくれている人への意識が欠けてしまいがちだということです。
社会は互いの労働で成り立っています。
“お金を出している自分が偉い”ではなく、働いてくれる人への感謝と自分が社会にできる貢献・労働を考える必要があると感じました。
FIREのRE(早期リタイア)の部分は考え続けるべきと再認識しました。
会社員としてお金に縛られて行う労働ではなく、自分が社会に貢献できる労働を模索したいです。
まとめ
今回は『お金のむこうに人がいる』について紹介しました。
お金・経済に関して、面白いクイズを使いながら解説してくれる良著です。
いままでのお金に対する固定観念を覆されるので、ぜひ読んでみてください。
本書には他にも以下のようなクイズがあります。
新国立競技場建設には1500億円かかった。
では、エジプトのピラミッド建設にかかったお金は、現在のお金に換算するといくらでしょう?
A:4兆円
B:1250憶円
C:0円
社会全体のお金を増やすにはどうすればいいでしょう?
A:銀行に預けて利息をもらう
B:みんなが働いてお金を稼ぐ
C:基本的には増やすことはできない
日本はアメリカとの貿易で毎年数兆円も稼いでいる。
この貿易によって、生活をより豊かなものにしているのは、どちらの国の人々でしょう?
A:アメリカ
B:日本
C:同じくらい生活が豊かになっている
答えと解説を知りたい人はぜひ、本書を読んでみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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