健康に良い食事や悪い食事について、エビデンス(研究データ)をもとに解説してくれる良書です。
ぜひ読んでいただきたい一冊ですが、著者が後に出版した『HEALTH RULES 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』では、食事に加えて運動や睡眠についても解説されていますので、そちらを先に読むことをおすすめします。

著者プロフィール
・書籍名:世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事
・著者:津川 友介
・出版月:2018/4/13
・出版社:東洋経済新報社
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部 准教授、医師。聖路加国際病院、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター(ハーバード大学医学部病院)、世界銀行、ハーバード公衆衛生大学院を経て現職。
ハーバード大学で博士号(PhD)取得。
専門は医療政策学、医療経済学。
本の目次
はじめに
第1章 日本人が勘違いしがちな健康常識
1 科学的根拠にもとづく本当に体に良い食事
2 食品に含まれる「成分」に惑わされるな
第2章 体に良いという科学的根拠がある食べ物
1 オリーブオイルやナッツは脳卒中やがんのリスクを下げる
2 果物は糖尿病を予防するが、フルーツジュースは糖尿病のリスクを上げる
3 魚は心筋梗塞や乳がんのリスクを下げる
第3章 体に悪いという科学的根拠がある食べ物
1 「白い炭水化物」は体に悪い
2 牛肉、豚肉、ソーセージやハムは健康に悪い
特別編 病気の人、子ども、妊婦にとっての「究極の食事」
総合評価
S 人生が変わる神本
A 絶対に読んで
B 時間があれば読んで (『HEALTH RULES 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』を読まない場合はA)
C 強いて読まなくてもいい
D 時間の無駄
タバコを吸っている人は、それが健康に悪いと自覚しています。
しかし、日々の食事に関しては、多くの人が自分の選択が健康にとってプラスなのかマイナスなのか、漠然としたイメージしか持っていません。
正しい情報がないままに、知らず知らずのうちに病気に近づき、実際に病気になって初めてそれに気づくことが多いのです。
そんな状況を避けるために、著者は過去の研究データをもとに、健康に良い食事・悪い食事についてまとめています。
具体的な「健康に良い食事」「悪い食事」は以下の通りです。

グループ1の食事を積極的にとり、グループ5の食事は避けることが推奨されます。
①魚:心筋梗塞や乳がんのリスクを下げる
②野菜、果物:野菜は心筋梗塞、脳卒中のリスクを、果物は糖尿病のリスクを下げる
③茶色い炭水化物(玄米、そば、全粒粉パンなどの精白されていない炭水化物):糖尿病のリスクを下げる
④オリーブオイル:脳卒中、がんのリスクを下げる
⑤ナッツ:脳卒中、がんのリスクを下げる
①豚肉、牛肉、加工肉:大腸がん、脳卒中、心筋梗塞のリスクを上げる
②白い炭水化物(米、パン、ラーメンなどの精白された炭水化物):糖尿病のリスクを上げる
③バターなどの飽和脂肪酸
これらについて、研究データを交えながら丁寧に解説されています。
特に好印象だったのは、「わからないことはわからない」とはっきり述べている点です。
例えば、「リコピンが体に良いというエビデンスはない」、「人工甘味料の健康の影響はあまりよくわかっていない」などです。
このような、科学者としての誠実な姿勢に、本書への信頼感が増します。
また、糖質制限ダイエットやグルテンフリーなど、巷で流行している食事法についても、その効果がどうかを冷静に解説しています(ばっさり切っています)。
本書で紹介されている健康に良い・悪い食事は、いずれもエビデンスが豊富にあります。
今後も新たな健康法は出てくると思いますが、そうした情報に惑わされず、しっかりとした判断基準を持ちたい人には、ぜひ読んでほしい一冊です。
気になった点
気になった点は2つあります。
1つ目は、研究データの示し方が主に文章での説明であるため、ややわかりづらい部分があることです。
グラフや表が何を言いたいかが、パッと見では分からないので、工夫の余地を感じました。
2つ目は、研究の前提がやや不明瞭な点があることです。
例えば「果物は血糖値を上げるが、フルーツジュースは血糖値を下げる」と記載されています。
これは、果物に含まれる食物繊維(血糖値を下げる効果がある)がジュースには含まれていないためです。
では、果物をミキサーにかけたスムージーはどうなのでしょうか?
フルーツジュースの定義が曖昧で、著者が参照した元の研究でもはっきりしないため、少しモヤモヤが残りました。
(webで調べる限りでは(※参照元リンク)、スムージーにすると食物繊維が細かく切断され、糖の吸収が早くなるため、果物をそのまま食べるよりも血糖値が上がりやすいようです。)
総評
この本単体でも素晴らしい内容です。
ただし、著者がその後に出版した『HEALTH RULES 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』では、本書に書かれた食事の情報に加え、運動や睡眠といった、より包括的な健康習慣についてもエビデンスに基づいて紹介されています。
『HEALTH RULES』では、食事に関する細かいデータはそこまで詳しく書かれていませんが、重要なポイントはきちんと押さえられています。
なので、まずは『HEALTH RULES』を読み、食事についてより深く知りたい場合に本書を読むという流れがおすすめです。
個別評価
新規性 ー 新しい情報があるか
今までに見たことがないアイデア、見方を数多く学べる
今までに見たことがないアイデアがいくつかある
今までに見たことがない情報がいくつかあるが、役には立つものは少ない
目新しい情報はほとんどない
加工肉が体に悪いことは知っていましたが、豚肉や牛肉も体に悪いとは思っていませんでした。
ナッツや魚が体に良く、バターや白米が体に悪いことはなんとなく知っていましたが、それを科学的なデータに基づいて説明してくれている点が新鮮でした。
汎用性 ー 多くの人の役に立つか
すべての人の役に立つ
多くの人の役に立つ
ある対象の人に対して役に立つ
僅かだが役に立つ人がいる
ほぼ誰の役にも立たない
病気になりたくないと思うのは誰しも同じです。
すべての人にとって役立つ一冊だと思います。
わかりやすさ ー 理解しやすい工夫があるか
普通に読めば内容を理解できる
集中して読めば内容を理解できる
何回も読まなければ内容を理解できない
意味不明
171ページとコンパクトな内容で、「健康に良い食事」「悪い食事」を順番に紹介する構成になっており、非常にわかりやすいです。
ただし、ハイライト箇所が多すぎて、逆にどこが重要か分かりづらく感じる部分もありました。
実用性 ー 本を読んですぐに役に立つか
読んで即座に実行できるアイデアが数多くある
読んで即座に実行できるアイデアがいくつかある
即座に実行できるアイデアはないが、長期的にみれば役に立つ
確率は小さいが、人生のどこかで役に立つかもしれない
役に立たない
すぐに普段の食生活に取り入れられる情報が多く、実生活で活かせる点が魅力です。
印象的なポイント
信頼できるエビデンス
本書では、健康的な食事の有効性を確かめるために、エビデンスの強弱がきちんと整理されている。
科学的根拠の強さは以下の順序で分類されている。

メタアナリシス
メタアナリシスは複数の研究結果を統合し、全体としての傾向を示すもの
ランダム化比較試験
これは研究対象者をランダムにグループ分けし、一方には特定の食品を摂取させ、もう一方には通常の食事を続けさせる方法
観察研究
ある集団における食事に関するデータを集め、特定の食品を多く摂取しているグループとそうでないグループを見つけて分析する方法
本書ではよりエビデンスの強い研究をもとに、健康的な食事を紹介している。
果物は糖尿病を予防するが、フルーツジュースは糖尿病のリスクを上げる
果物を摂取する人は、摂取しない人に比べて糖尿病のリスクが低下することがわかっている。
果物には果糖が含まれているが、同時に血糖値を抑える働きを持つ食物繊維も豊富に含まれているため。
特に、ブルーベリーやブドウはその効果が高い。

一方で、フルーツジュースの摂取は糖尿病のリスクを高める可能性がある。
例えば、1週間にコップ3杯のフルーツジュースを飲む人は、糖尿病のリスクが8%増加するというデータがある。
この違いは、果物そのものに含まれる食物繊維がジュースでは失われていることが原因と考えられている。
白い炭水化物は身体に悪い
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」で構成されている。
しかし、白米や小麦粉は精製される過程で食物繊維が取り除かれ、ほぼ糖質だけの状態になる。
このため、白米や小麦粉は砂糖とほとんど同じ。

白米を食べるのとケーキを食べるのは一緒!!
具体的には、1日お茶碗2杯の白米を食べると糖尿病のリスクが15%増加する。
3杯の場合、そのリスクは48%まで上昇すると報告されています(1日1杯の場合と比較)。
一方で、全粒粉、玄米、そばといった精白されていない「茶色い炭水化物」を摂取することで、糖尿病のリスクを低下させることができる。
「成分」ではなく「食品」で選ぶ
ベータカロテンを豊富に含む緑黄色野菜を食べることは健康に良いとされているが、ベータカロテンを抽出して摂取すると、逆にがんのリスクが高まる可能性がある。
同様に、リコピンを含むトマトを食べることは健康に良いとされているが、リコピンだけを抽出して摂取することには、健康に対する有益なエビデンスは存在していない。
健康的な食事を実践するために重要なのは、「成分」そのものではなく、「食品」を意識して食事をすること。
健康に良い食事はダイエットにもつながる
食事内容と体重変化の関係は以下のとおり。

健康に良い食事は体重を減らし、悪い食事は体重を減らす傾向がある。
このデータは観察研究の結果であり、「これらを食べると体重が減る(増える)」とはいえず、「体重が減った(増えた)人はこれらの摂取量が多くなっていた」ということを示すのみだが、参考になるデータ。
まとめ
日々の食事によって、知らず知らずのうちに病気のリスクを高めている可能性があります。
本書や『HEALTH RULES 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』を読むことで、自分の食生活が体に良いのか悪いのかをまずは知っていただきたいと思います。
そして、知ったうえで、できる範囲で食生活を見直していくことが大切です。
ちなみに我が家では、この本を読んでから、毎日パンに塗っていたバターをやめ、豚肉中心だった食事を鶏肉(時々魚)中心の食事に見直しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
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