もっとラクに生きていいかも、と肩の荷がスッと降りる一冊です。
生き急いでいる現代人にぜひ読んでいただきたいです。

著者プロフィール
・書籍名:年収90万円で東京ハッピーライフ
・著者:大原扁理
・出版月:2016/7/20
・出版社:太田出版
1985年愛知県生まれ。
割れたガラス窓を段ボールでふさぐ低所得家庭で生まれる。
学生時代にいじめにあう。
高校卒業後進学・就職せずフリーターに。
フリーター生活3年後に、100万円で世界一周旅行。
実家から離れるために愛知→東京に上京。
家賃2万円のアパートで隠居生活。
本の目次
はじめに
第一章 ハッピーライフの基本とは
第二章 フツーって、何?
第三章 衣食住を実感するくらし
1 「食」で、ひとはつくられる
2 「衣」を、生活から考える
3 「住」は、恋人のようなもの
第四章 毎日のハッピー思考術
おわりに
総合評価
S 人生が変わる神本
A 絶対に読んで
B 時間があれば読んで
C 強いて読まなくてもいい
D 時間の無駄
高校卒業後に3年間引きこもり、その後単身で世界一周旅行に出発。
帰国後、25歳で年収100万円以下の隠居生活を始めたという異色の経歴を持つ大原扁理さんの生活がわかる本です。
月の生活費はなんと約7万円(所得税や住民税、社会保険料は低所得のため免除)。
食事には野草を取り入れ、趣味は”散歩”と”図書館で本を読むこと”という、お金がかからないシンプルな暮らしを送っています。
ただし、彼は節約や貯金のためにこのような生活をしているわけではありません。
「自分がやりたくないことは徹底的にやらない」という考えを突き詰めた結果、たどり着いたのが隠居生活だったのです。
この本を読むと、たくさんのお金をかけたり、そのお金を稼ぐために忙しく働いたりしなくても、幸せに生きていけるのではないかと思わされます。
また、働くことや人生の選択に対する大原さんの考え方も興味深いです。
彼はまるで悟りを開いたかのような、一歩引いた価値観を持っています。
たとえば、「隠居生活はベストな生き方か?」という問いに対しては「そんなはずはない」と答えながら、
「何がベストかという考え方から、できるだけ離れたほうがラク。自分の選択した生き方が正しいとか間違っているとか、人に言ったり、証明したりする意味なんてない」と述べています。
自分にとって心地よい生活ができていれば、他人にどうこう言われても関係ない、という考え方です。
このように物事を諦観するような大原さんの視点は、社会から「頑張ること」を強いられているように感じている現代人にとって、必要な見方だと感じました。
気になった点
気になった点は2つあります。
1つ目は、大原さんのライフスタイルをそのまま真似てはいけないということです。
大原さんは、自分自身を丁寧に見つめる作業を重ねてきたからこそ、自分がやりたいこととやりたくないことを明確に理解しています。
その結果として、今のライフスタイルがあるのです。
たとえば、会社勤めが嫌になったからといって、いきなり大原さんのライフスタイルを真似しても、おそらくうまくいかないでしょう。
「自分はなにをしているんだろう?」「将来は大丈夫なんだろうか?」といった不安に押しつぶされてしまう可能性があります。
それは、自分を内省せずに、いわゆる“社会の価値観”で生きているからです。
そうした社会の価値観と真逆の生き方をすることに、違和感を覚えてしまうのです。
本書でも述べられているように、大切なのは人それぞれの心地よいライフスタイルを送ることです。
そのためにも、自分自身を丁寧に見つめることが重要だと思いました。
2つ目は、大原さんの政治思想のような主張が本の終盤に書かれており、少し押しつけがましさを感じた点です。
「隣の人も自分と同じ人間であると想像する能力を養っておかないと、全体主義に巻き込まれて、最悪は戦争になる」といった内容です。
前半では大原さんのほのぼのとした生活が語られていたのに対し、後半ではこうした主張が見え隠れし、やや居心地の悪さを感じました。
もちろん、エッセイである以上、何を語るかは筆者の自由ではありますが、ややトーンが変わってしまった印象です。
総評
特にFIRE(経済的自立と早期退職)を目指している人にはおすすめの一冊です。
FIREを達成するためには生活費を下げることが重要であり、そのためには「自分が何にお金を使えば幸せなのか」を知ることが必要だからです。
大原さんはそれを突き詰めた結果、年収90万円でも快適に暮らせるようになりました。
大原さんの価値観を知っておくことは、資産形成においても大きなメリットがあると感じました。
個別評価
新規性 ー 新しい情報があるか
今までに見たことがないアイデア、見方を数多く学べる
今までに見たことがないアイデアがいくつかある
今までに見たことがない情報がいくつかあるが、役には立つものは少ない
目新しい情報はほとんどない
大原さんのお金の使い方や、日々の生活に対する考え方は非常に新鮮です。
汎用性 ー 多くの人の役に立つか
多くの人の役に立つ
ある対象の人に対して役に立つ
僅かだが役に立つ人がいる
ほぼ誰の役にも立たない
FIREを目指している人や、ミニマルな生活を志向する人にとっては、大変参考になります。
わかりやすさ ー 理解しやすい工夫があるか
普通に読めば内容を理解できる
集中して読めば内容を理解できる
何回も読まなければ内容を理解できない
意味不明
全191ページで非常にコンパクトです。
1時間もあれば読み終えることができます。
語り口が話し言葉でとても読みやすく、内容も理解しやすいです。
実用性 ー 本を読んですぐに役に立つか
読んで即座に実行できるアイデアがいくつかある
即座に実行できるアイデアはないが、長期的にみれば役に立つ
確率は小さいが、人生のどこかで役に立つかもしれない
役に立たない
大原さんのライフスタイルはかなり振り切ったものであるため、簡単には真似できません。
ただし、「自分のことを見つめ、自分が心地よい生活をすればよいこと」など、長期的には役立つ価値観が書かれています。
印象に残ったポイント
図書館
大原さんは図書館を、自宅以外に「本用のコインロッカー」を無料で借りているような感覚で使っている。
「何万冊という本を自分のために所蔵していると思うと楽しい」と語っており、本好きには共感を呼ぶ考え方。
どうしても進む必要があるとき
人生の選択に迫られたときは、消去法が有効。
やりたいことはわからなくても、やりたくないことは案外すぐに判断できる。
目の前の選択肢から「やりたくないもの」をどんどん消していき、残った中から「これなら我慢できるかも」という選択をすることを勧めている。
食事について
大原さんの食事は「玄米菜食」
玄米、みそ汁、つけもの。プラス納豆や魚。
これを必ず1日1食。
肉は基本食べない。
1日の食事の例は以下のとおり。
朝ごはん:トースト、リンゴジュース
昼ごはん:小松菜そば、納豆
夜ごはん:ごはん(玄米)、ヨモギの味噌汁、たくあん
キーワードは「一物全体」。
野菜でも魚でも丸ごと食べるのが栄養のバランスが良いということ。
ごはんは精白しないもの、野菜は芯まで、魚は骨まで食べるほうがよいという考え。
野菜は農家の直売所から買ったり、野草を採取している。
この食事は、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』で紹介されている、健康に良い5つの食材に合致している。
①魚:心筋梗塞や乳がんのリスクを下げる
②野菜、果物:野菜は心筋梗塞、脳卒中のリスクを、果物は糖尿病のリスクを下げる
③茶色い炭水化物:糖尿病のリスクを下げる
④オリーブオイル:脳卒中、がんのリスクを下げる
⑤ナッツ:脳卒中、がんのリスクを下げる
①豚肉、牛肉、加工肉:大腸がん、脳卒中、心筋梗塞のリスクを上げる
②白い炭水化物:糖尿病のリスクを上げる
③バターなどの飽和脂肪酸:心筋梗塞のリスクを上げる

大原さんは研究データを徹底的に読み込んで、この食事にたどり着いたわけではありません。
自分の体調と丁寧に向き合いながら食生活を組み立てた結果、自然とこの理想的な食事スタイルに行き着いたのは驚きです。
一日の流れ
大原氏の一日の流れは以下のとおり。
朝
・8時起床
・白湯、紅茶を飲む
・日向ぼっこ
・朝ごはん
・読書
昼
・昼ごはん
・農家の直場所や図書館に散歩
夜
・17時 夜ごはん
・読書
・就寝

やりたいことだけやる生活!!
大原さんの生活費(月額)
家賃:28,000円
共益費:1,500円
固定費(ネット含む):15,000円
食費:10,000円
その他:5,500~15,500円
→ 合計:約70,000円(※所得税・住民税・社会保険料は免除)
隠居はベストな生き方か?
「それぞれが自分にとって快適な生き方をするべき」と大原さんは述べている。
彼は最初から隠居を目指していたのではなく、「嫌なものは拒否し、快適なものを選んでいった結果、たどり着いた先が隠居だった」と述べている。
まとめ
「仕事や自己研鑽などを頑張らなくては」と社会に追われるように感じる現代人にとって、この本は「そんなに肩ひじ張らなくても大丈夫かも」と一息つけるきっかけになる一冊です。
ちょっと疲れてしまったな、と感じている社会人にこそ手に取っていただきたい一冊です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
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