橘玲氏の新作ということで期待していましたが、正直いまいちでした。
1章、2章は面白いのですが、それ以降はどこにでもある金融の解説書という印象です。
本書は2013年3月に発売された『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』の文庫版『国家破産はこわくない』の骨格を残しつつ、全面的に書き直したものです。
前著は読んでいませんが、正直目新しいアイデアはありませんでした。
インフレと実質賃金の低下がこれからも続く場合にどのような金融戦略をとればよいか、というのが本書の流れですが、大半が金融商品の紹介に費やされており、本書ならではの価値観は見えませんでした。
どちらかというと、「金利と為替の関係とは?」「どんな金融商品が売られているか?」が説明された教科書のようなものです。
もちろん勉強にはなりますが、最適な資産運用方法は結局オルカンやS&P500などの海外のインデックスファンドへの投資であると説明しているなど、肩透かしを食らいました。
全体的な感想としてはいまいちですが、1章、2章は面白いです。
強いて読まなくてもいい一冊です。
橘玲氏の本はもっと面白い本があるので、未読の方はこちらから読みましょう。

著者プロフィール
・書籍名:プアジャパン インフレ世界を生き抜く資本戦略
・著者:橘 玲
・出版月:2026/6/16
・出版社: プレジデント社
1959年生まれ。早稲田大学卒業。編集者を経て、2002年、経済小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。小説、評論、投資術など幅広い分野で執筆。
本の目次
まえがき 「プアジャパン」ではこれまでの常識は通用しない
第1章 〈近未来小説〉日本人を待っていた浅い眠り 2026年版
第2章 プアジャパンの現実と日本型スタグフレーション
第3章 金利と為替を理解する
第4章 インフレ時代の資産運用術 初級者編
第5章 インフレ時代の資産運用術 上級者編
あとがき 6000万人のミリオネアがいる「残酷な世界」
総合評価
S 人生が変わる神本
A 絶対に読んで
B 時間があれば読んで
C 強いて読まなくてもいい
D 時間の無駄
1章では、インフレと実質賃金の低下がこのまま続いた場合の近未来を描いた小説として描かれます。
インフレによってコーヒー一杯が3800円になり、都心は外国人の金持ちばかりになります。
企業も円安で海外企業に買収され、海外企業の文化に日本人は従うしかない状況です。
治安が良く清潔なのに安い日本が、外国人に食い物にされている未来が描かれます。
将来の日本に対して絶望感、危機感を抱くには十分で、とても面白いです。
2章では1章で描かれた未来が、起こりうる未来であることを数字で解説してくれます。
日本のインフレの原因は人口減少による供給能力の低下であり、これは避けられない運命です。
だからこそ政府・政策に期待するのではなく、金融リテラシーを向上させ、自分の資産は自分で築き守らなくてはなりません。
3章では、金利と為替の関係を基礎から解説し、4章以降ではインフレと実質賃金の低下がこれからも続く場合に、どのような金融商品が有用か(どういうものが不要か)を解説しています。
1章、2章の内容はまさに絶望的です。
円安、インフレという事象が、人口減少という避けられない理由から来ており、どうやっても避けることができません。
もちろん優秀な政治家が起死回生の一手を打てば解決するかもしれませんが、その一手の効果が出るのも数十年後です。
そんな泥船のなかで、ほかの人はどうあれ、せめて自分と自分の家族の生活は守れるようにどうすればよいかが、3章以降で解説されますが、この内容には独創性を感じませんでした。
多くの人にとっての結論はシンプルで、NISAで海外株インデックスを買うというものです。
株はインフレに強く、かつNISAによる税金のメリットも大きいので、万人への処方箋はオルカンやS&P500などへの長期分散投資になります。
この結論は現在あまりにも一般的であり、驚きに欠けます。
5章ではレバレッジを効かせた投資や、オプション取引についても解説していますが、一般人には無用な内容でしょう。
(橘氏も取引を勧めるのではなく、身を守るためにどのようなものか知っておくとよいというスタンスではありますが)
投資をまだしていない人が、投資をする必要があることに気づくために、1章、2章を読むのはよいかもしれませんが、ほかにも初心者向けの良著があります。
強いて読まなくてもいい一冊だと思います。
個別評価
新規性 ー 新しい情報があるか
今までに見たことがなく、人生を変える価値観を学べる
今までに見たことがないアイデア、見方を数多く学べる
今までに見たことがないアイデアがいくつかある
今までに見たことがない情報がいくつかあるが、役には立つものは少ない
目新しい情報はほとんどない
1章、2章の内容は面白いですが、全体的には新規性のある情報はあまりありませんでした。
汎用性 ー 多くの人の役に立つか
すべての人の役に立つ
多くの人の役に立つ
ある対象の人に対して役に立つ
僅かだが役に立つ人がいる
ほぼ誰の役にも立たない
ある程度、資産運用の知識や経験がある人にとっては、「そんなこと知っているよ」という内容が多いでしょう。
いままで投資をしたことがない人にとっては、投資の必要性を感じるための良いきっかけになると思います。
わかりやすさ ー 理解しやすい工夫があるか
パッと見て内容を深く理解できる
普通に読めば内容を理解できる
集中して読めば内容を理解できる
何回も読まなければ内容を理解できない
意味不明
251ページで読むまでに3時間かかりました。
解説図などがたまに入っています。
4章、5章の金融商品の解説は、内容が少し難しく、完全に理解するのは難しいかもしれません。
実用性 ー 本を読んですぐに役に立つか
読んで即座に実行できるアイデアが数多くある
読んで即座に実行できるアイデアがいくつかある
即座に実行できるアイデアはないが、長期的にみれば役に立つ
確率は小さいが、人生のどこかで役に立つかもしれない
役に立たない
今後の日本において、お金について無防備な人の未来は明るくないことが分かる内容です。
投資をまだしていない人は、本書を読んで危機感を持って投資などに臨む必要があります。
印象に残ったポイント
みんなが平等に貧しくなった
インフレを加味すると、過去30年間において、日本人の給与の中央値は9%も下落している。
日本は「老人まんなか社会」
高齢者世帯と母子世帯の、拠出(税金・社会保険料)と給付の差し引きを見ると、高齢者世帯は+271万円、母子世帯は59.3万円。
高齢者世帯は持ち家を保有しているケースがかなり含まれていることを考えても、家計が苦しい母子世帯よりも高齢者世帯に資金が分配されていることが分かる。
まとめ
インフレによる物価高を感じる一方、資産のほとんどを株式で持っている身からすると、資産額の増加の方が優位のため、お金の不安は感じていないのが実情です。
本書で語られる最善策を6年前から着実に実行してきた成果です。
今後も金融リテラシーの低い人はどんどんと生活が苦しくなっていくでしょう。
投資をしていない人は一日でも早く、インフレに強い資産への投資を始めましょう。
そのきっかけとして本書は有用です。
気になる方はぜひ一読を。
ただし資産形成のガイドブックとしては以下の本の方が有用です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
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